事務局だより2021年 春

「2021年 春」

 2020年11月に100歳のお誕生日を迎えた松爺でしたが、今年1月に静かに天国に召されたことを謹んでお伝えいたします。
 世間がこのような状況ですので、面会できずお誕生日会もできませんでしたが、98歳のまで立派に災害復興住宅で一人暮らしをした後、グループホームに入居して、もうやり残したことはないというように早々と、いつもの早足で天国に昇っていかれたような気がしております。
 自分史「松の葉」にもありますが、波乱万丈の人生でした。東日本大震災の津波の被害にもあいました。
 でもそんな中でも生き抜いてきた強さからでしょうか、いつも誰かのためになることをと考えていて、ひたすら黙々と手を動かしている松爺でした。
 年中松葉摘みと、秋には老人ホームのお正月のお餅のために胡桃割り…。住宅の玄関先に座り、毎日朝から晩まで仕事していた姿が忘れられません。
 松爺とは自分史の編集がご縁でした。
産後体調を崩していた私に、片道30分の山道を毎週、松葉ジュースを持って来て無言で置いていかれました。
 その松葉ジュースはまるで砂漠に水のように身体に染み入りました。いつも届くのが本当に待ち遠しかったです。
 そんなこんなで体力が戻り無事に編集の仕事を終えた後、松葉仕事を引退した松爺に今度は私が松葉ジュースを届ける番だと思いました。グループホームに入居するまで、松爺の松葉ジュースを作れたことは、私の人生でとても嬉しい思い出です。
 今でもそうですが、山を登り、清んだ空気を吸いながら松を採る作業は、本当にかけがえのない時間です。子供の成長を見届けることができないのではと不安に駈られた日々が長かっただけに感じるのかもしれません。
 不思議と松の群落を前にすると、悩みも薄れて、新しい発想や勇気が湧いて来ます。いつしか、松と語らうことが日常となり、心の支えとなっています。
松爺に出会えたことに感謝。
色々悩んで来たけど、この場所に嫁いできたことに感謝。
そして、松と自然に感謝です。\(^-^)/